【宮城県知事選】参政党が支援・和田政宗が現職と接戦。参政党知事の誕生で宮城県は財政破綻自治体になる!?【林直人】
◾️財源を自ら破壊する「数百億円の減税」
さらに不可解なのは、この莫大な歳出拡大と同時に、県の財政基盤そのものを破壊する大規模減税を打ち出している点だ。個人県民税の一律5%減税、子育て世帯への最大100%減税、環境税や宿泊税の廃止――。これらは、過去最高の税収を記録した県の財政能力を、自らの手で著しく毀損する行為だ。削減される歳入は、年間で数百億円規模に達することは確実視される。
歳出は青天井に膨れ上がり、歳入は意図的に削り取られる。その結果生まれるのは、年間で少なくとも200億から300億円規模の、巨大な財政的ブラックホールである。和田氏がこの穴を埋める財源として唯一具体的に挙げたのは、水道事業の利益、わずか7億円。それは、ダムの決壊を指一本で食い止めようとするに等しい、あまりにも非現実的な回答だ。
◾️すでに燃え尽き寸前だった県の「貯金」
しかし、最も衝撃的な事実は、この無謀な計画がなくても、宮城県の財政はすでに危機的な状況にあるという現実だ。県の公式予測によれば、県の「貯金」にあたる財政調整基金は、現在の約407億円から、わずか数年後の2029年度末には65億円にまで激減することが示されている。これは、今の行政サービスを維持するだけで、毎年100億円以上が消えていく計算だ。
もはや火の車だった県財政に、和田氏の計画はガソリンを注ぎ込むようなものだ。導き出される結論は一つしかない。この公約は、県の貯金を任期中に使い果たし、県を構造的な赤字状態へ叩き落とす可能性が極めて高い。その先に待つのは、インフラ、福祉、防災といった必要不可欠なサービスの大幅な削減か、未来の世代にツケを回す大量の借金地獄かの二択である。
これは単に「財源がない」というレベルの話ではない。県の公式予測を完全に無視した、極めて無責任な賭けであり、「財政破綻への道筋」そのものと言わざるを得ないのだ。
◾️宇宙港、国際ハブ、城の復元… 和田氏が掲げる「夢プロジェクト」は県民を欺く蜃気楼か
元参議院議員、和田政宗氏の公約は、宇宙や世界、そして歴史遺産へとつながる壮大な未来を描いてみせる。しかし、その輝かしいビジョンの裏側を覗けば、そこには戦略的欠陥と経済的矛盾に満ちた、危険な計画が横たわっている。これらは未来への投資ではなく、県の限りある資源を食い潰す誤った賭けではないのか。
◾️宮城宇宙港構想――すでに勝者がいるレースへの無謀な挑戦状
「宮城県に宇宙港を」。その言葉の響きは、確かに未来を感じさせる。しかし、この野心的な構想は、日本の航空宇宙産業の現実を完全に無視した机上の空論だ。
日本の商業宇宙港をめぐる競争は、事実上すでに決着がついている。数十年にわたる開発の歴史を持つ北海道の「北海道スペースポート」が、民間企業の打ち上げ拠点として確固たる地位を築き、独走しているのが現実だ。今から宮城県が後発で参入することは、限られた国内の需要や支援を奪い合うだけの、国家レベルでの重複投資に他ならない。角田市のJAXA施設はあくまでエンジン開発の拠点であり、ロケットを打ち上げるための地理的条件さえ満たしている保証はない。
この計画は、実現可能性の冷静な分析を欠いたまま、先進的なイメージだけを振りまく「威信事業」そのものである。真に育成すべき地域産業から目をそらし、根拠なき野心に県の資源を投じようとする無謀な挑戦だ。